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赤く燃え盛る城、窓という窓から炎が吹き出し、城主が集めたであろう、調度品も灰へと消えていく。
異常な熱気の中、布にくるまれた何かを抱えた者が鋼鉄の扉を蹴破り、城の外へと飛び出してきた。
短く、乱雑に切られた髪、体の至るところから出血したのか、青い簡素な生地の服の大部分を赤黒く染めていた。
そいつは布ごと抱えてきたものを地面に叩きつけると布の中から痛みを訴える声が発せられた。
布から這い出てきたのは子供、10歳ほどの少年だった。いい身分なのだろう、綺麗な絹糸で作られた服を着ており、結晶体を抱えていた
「ああ、あ」
少年は燃え盛っている城を見て涙を流し始めた。
嗚咽を上げ、泣き出す。
「うるさいなぁ。絶望的なのは僕もだし、こっちだって泣きたいつーの」
「お前のせいだ!勇者!」
少年は泣きながら悲鳴のように叫んだ。
勇者と呼ばれたそいつは皮のズボンにあるはずのものを確かめるが、そんなものはない。
服以外のものはない。
その服も胸の中心に穴が開き、素肌が覗いていた。
指先でそれを触り、忌々しげに呟いた。
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