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「なん、で」
貫かれた気管を介して溢れる血を吐きながら、勇者は疑問を口にした。
苦しみと痛みを訴えるよりも、それよりも大きな驚愕が、問いとなって漏れだした。
「なんで?だと」
戦士はニタリと笑いながら勇者の背を蹴飛ばし、己の剣を引き抜いた。
「この状況が答えだ。『魔王と勇者の死』それこそが俺たち勇者パーティーの任務だ。不死の勇者1人でも魔王は倒せる。なのに足手まといにしかならない俺たちが着いてきたことを疑問に思わなかったか?お前は魔王を倒すことで不死の能力を失う、だとしてもだ。」
戦士は床に伏した勇者の頭を踏みつけた。
「お前は不死であることを除いても脅威にしかならないんだよ。そのふざけた戦闘能力に正面から立ち向かっても勝てる存在なんて最早いない!俺たちはお前に信頼され、安心して背中を預けられる存在になる、そして最も疲弊し安堵した瞬間にお前を殺す。それが最適解としたのだ!」
痛い、痛い、痛い。
何度も感じていた死の予兆。
戦士の言葉ももう勇者の耳には届かない。
薄れゆく意識の中、自身の体が揺さぶられることはわかるが、勇者にそれに答えることはできなかった。
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