始まりは終わり、終わりが始まり

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躊躇なく進んだのだが、中々終わりが見えず、勇者は若干後悔し、戻ろうかと思い始めていた。 先程いたフロアは階段を何度も駆け上がった先の魔王城の最上階に位置するだろう。 正確に数えた訳ではないが登った段数と同じくらいは降りた気がした。 そしてその倍は降りたと思う頃、ようやく階段の終わりにたどり着いた。 そこにあった鉄製の扉を勇者は蹴り飛ばした。 一撃で歪み、留め具が壊れた扉はその向こう側の本棚に突き刺さった。 「ひぃ!?」 「は?」 勇者は悲鳴と共に目の前に現れた部屋の内装を見て困惑していた。 その部屋は所謂書斎であった。 壁一面に中身がみっちり詰まった本棚が並び、中央には机と椅子があり、小さな幼子がしがみついていた。 勇者が察するに勉学に励んでいた彼の真後ろを勇者が蹴り飛ばした扉が通過したようだ。 完全に怯えられてしまっている。 「君は誰だい?」 勇者が問うと少年は泣きながら答えた。 「わ、我は魔王「はぁ!?」ごめんなさいごめんなさい!殺さないでぇ!!!」 が、途中で叫んだ勇者の声に遮られた上に号泣し、命乞いを始めた。
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