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「あらあら、今年も渡せなかったのか」
「余計なお世話だよ」
木製の階段に座り込んでいる彼女の手元には、丁寧な包装が施されている箱がある。
「じゃ、今年もそれもらうぞ?」
「勝手にすれば良いよ」
いつもの事ではあるが、毎年毎年悲しげな表情の彼女からチョコを頂く…いや、半分取り上げている形になるのは悲しい。
だが、彼女の想い人は俺じゃない。数年前から、これで何度目だろうか。
最初の相談を受けて、自分の恋心を自覚した。しかし彼女との関係が壊れるのが怖くて、幼なじみのまま、おちゃらけた雰囲気を押し出して、彼女との関係を続けてきた。他人のために作られたチョコで、我慢してきた。
しかし、やっぱり、辛いわな。
「なんで、なんで泣いてるの」
叱責するような彼女の声色に、頬が熱を帯びるのがわかった。
「さ、寒いから鼻水が出てるだけだし!」
頬を撫でる風は、とても冷たかった。
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