来年、

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「どうすんの、それ」 「食べるよ、自分で」 僕の問いに彼女は口を尖らせる。 バレンタインの今日、想い人に渡しそびれたチョコをその胸に握りしめて。 「よりによってこんな日に失恋とかついてないよね」 目の前でくっつくところを見てしまったらしい彼女はこちらを見あげ、わざとらしく笑ってみせた。 だけど彼女がどんな目であいつを見ていたかを知っているから、いつものようには笑えなかった。 僕もまた、そんな彼女の横顔を眺めていたのだから。 小さな頃から、ずっと。 「……来年」 「ん?」 来年はそれが欲しいと言ったらこの関係はどう変わってしまうのか。 いつまでもこうして君の傍に――そんな言い訳に大切な言葉を隠してしまう僕は、臆病者だ。 「……来年は、相手がいるといいね」 「ウルサイ」 茶化して笑う僕に君はべーっと舌を出す。可愛い。 来年こそはきっと、そんな君の隣に。
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