9回裏2アウト絶対絶命

3/3
前へ
/3ページ
次へ
事の始まりは昨日の夜のミーティングだ。 いつものように、次の試合へ向けて、練習をし、監督、コーチ、チームメートが集まるミーティングに参加した。 いつものように、相手チームの分析、前回の投球の配分等をチームで確認した。 明日の相手チーム、姫路タイタンズの予告先発は、因縁の相手である、須崎 泰明だった。低めに伸びてくるストレートと、130キロ代の鋭いフォークボールを武器に、 三振の山を築く、相手チームの先発のエースだ。 今シーズン、私達マーベラスは、須崎に一度も勝てずに、6連敗していた。 私は、今回こそは絶対に打ってやるぞと意気込んでいた。そんな折、監督が私の肩をそっと叩き囁いた。 『広中君、今日、君に個別で話したい事がある。誰にもこの事は言うな。ミーティングが終わった後に、必ず一人で監督室に来てくれ。』 私は、きっと須崎の攻略法について意見がもらいたいのだろうと、特に不思議に思う事も無く、監督の言う事に頷いた。このチームでは、良くある事なのだ。このチームのキャプテンであり、チームの中で唯一の3割バッターである私は、今や監督のアドバイスよりも的確な攻略法を持っている。ミーティングの場で、私がチームメート達に熱く語っても良いが、それでは、監督の威厳が無いからということなのだろう。 ミーティングは何も変わった様子は無く終了し、私は監督室のドアを叩いた。 すると、監督がドアから顔を出し、辺りを見渡した。 『誰もいないようだな、入れ』
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加