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事の始まりは昨日の夜のミーティングだ。
いつものように、次の試合へ向けて、練習をし、監督、コーチ、チームメートが集まるミーティングに参加した。
いつものように、相手チームの分析、前回の投球の配分等をチームで確認した。
明日の相手チーム、姫路タイタンズの予告先発は、因縁の相手である、須崎 泰明だった。低めに伸びてくるストレートと、130キロ代の鋭いフォークボールを武器に、
三振の山を築く、相手チームの先発のエースだ。
今シーズン、私達マーベラスは、須崎に一度も勝てずに、6連敗していた。
私は、今回こそは絶対に打ってやるぞと意気込んでいた。そんな折、監督が私の肩をそっと叩き囁いた。
『広中君、今日、君に個別で話したい事がある。誰にもこの事は言うな。ミーティングが終わった後に、必ず一人で監督室に来てくれ。』
私は、きっと須崎の攻略法について意見がもらいたいのだろうと、特に不思議に思う事も無く、監督の言う事に頷いた。このチームでは、良くある事なのだ。このチームのキャプテンであり、チームの中で唯一の3割バッターである私は、今や監督のアドバイスよりも的確な攻略法を持っている。ミーティングの場で、私がチームメート達に熱く語っても良いが、それでは、監督の威厳が無いからということなのだろう。
ミーティングは何も変わった様子は無く終了し、私は監督室のドアを叩いた。
すると、監督がドアから顔を出し、辺りを見渡した。
『誰もいないようだな、入れ』
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