第4話 ありふれた日常

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黒づくめの撮影モードな高崎さんが外でタバコを吸っていた。 「これからいくとこ人気で半年先まで予約が埋まってるらしいです」 さっとタバコを携帯灰皿に吸い込ませる高崎さんに続いて車に乗り込む。 「俺も、今年知り合いによばれてここの式場に来たんだよね~。 料理もなかなかうまかったしさー。高そうだけどねー」 私たちは軽く打ち合わせしながら撮影場所にむかった。 今年離婚が成立したばかりだというカメラマン高崎さんは長い付き合いということもあってついつい遠慮なく質問してしまう。 「俺が結婚したのは10年前。けど結婚したときからほとんどレス状態になっちゃって今年いよいよ離婚成立」 はは~。レスね~。 レスからの離婚って多いよね~。 「いやぁ、好きな人ができたって言われちゃってさ。そう言われると逆にやる気が出てくるのって不思議なもんだよねー。俺はそこでもう一回やり直そうとしたんだけどね。だけどあっちが申し訳ないからってそのままやり直せずダメになっちゃった」 ふぅ~ん。そうっか~。10年の月日を持ってしてもそんなもんかぁ~。 レスっていうフレーズも他に好きな人ができたってフレーズもどっちも嫌だなー。 夫婦付き合いが進んでいくとそういうことも十分あり得るってことだよね。やっぱり結婚ってなんか恐ろしいよ~。レスも離婚も経験したくないし。 「いや、そんなことないよ。一回してみたらいいよ。結婚はいいもんだよ」 と、ハンドルを握る高崎さんにそう言われると説得力があるようなないような。 そうかなぁ~っと前を見ればちょうど幸せな撮影現場に到着。 離婚したてのカメラマンと結婚への恐れをつのらせる編集者で、本日の撮影はとり行われます。 こんな人たちで作るウェディング雑誌ってどうなんだろうか? なんてことが頭をよぎる暇もなく、晴天に恵まれ、和のテイストを取り入れた式場は最高に美しく、モデルの花嫁さんも花婿さんもとっても素敵で、その日は美しいカットがバシバシ撮れて最高の撮影となったのだった。
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