第5話 予兆ナシ

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小泉幸太郎。これ、うちの編集長の名前。 俳優の小泉孝太郎と一字違い。 「違いは僕の方が幸せってことよ。あの子よりイケメンでしょう~?」って。 たしかに毎日幸せそう。 オーバー40の脂ののった感じ。美しさに対する執着は編集部一。 その甲斐あってかメチャメチャイケメン。メチャイケですわ。 けど皮肉なことにいっさい女に興味なし。 ここの編集長やる前は、うちの看板メンズ雑誌の編集部員をばりばりやっていたから。 なぜ今ここのウェディングの社内報雑誌を作ってるのか、は、ほんと謎。 一回聞いたことあるけど。 今度教えてあげるわ。って、軽くかわされた。 この間、撮影した結婚式場のクレジットを報告したときなんか。 「え~。高~い。場所代ひいてもそれはぼったくりね~」って。 本気なのか冗談なのかよくわかないことも多くて。 結婚ってテーマあんまり好きじゃないんじゃないかな。 「そういう男女の契約って、ハタで見てたら面白いのよ」 って、私の考えてることがよまれたのか回り込んで言われた。 手をひらひらさせながらじゃあね~って外に出てしまった。 デスク付近に香水の匂いだけ残ってる。 深追いしないけど謎が多いうちの編集長。 前の雑誌でもめてここに来たとか、クライアイントからすごくお金もらってるとかいろんな噂があるんだけど。実際どうなんだろう? 入れ違いに、戻ってきたゆい子はコンビニの袋をぶら下げている。 「なんで、女に興味ないのに結婚雑誌の編集やってるのかな?」 本当は編集長に聞きたいことなんだけどついゆい子に聞いてしまう。 「お金じゃないの?」
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