第7話 ゆれる

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高橋ミエ 46歳 ウェディングプランナー バツイチ。再婚。ハワイと日本をいったりきたり。 苦手。 打ち合わせ場所は、ぜったいにル・シャルダン(表参道の有名カフェ)。 それだけでもうんざりする。そんなに日差しが強くないのに必ず、でかいサングラスをかけている。 このカリスマは、何人もの芸能人の結婚式をプランニングした経歴を持ち、ゴーインなほどのプロデュースで「私があなたを幸せにします!」っと、アクの強いキャラクターをブイブイ言わせている。 そこに目をつけたTV局が彼女を起用しはじめると、しょっちゅうTVによばれるようになり、最近では結婚できない芸能人をやいやいつっこむ結婚アドバイザーということでTVの中で定着しつつある。 芸能人とゲイの友人というのは切ってもきれないものなのか。 幸太郎編集長と仲がいいこともあってあまり目立たない雑誌だというのに、いまだにうちの雑誌Wishに出演してくれている。 この辺りに少々きなくさいお金の匂いがしなくもないけど。 私とゆい子が編集長の経歴を噂するのはこの辺のところ。 私がいくら苦手で関わりたくなくても残念なことに、タレントと化したカリスマ? ウェディングプランナーのおかげでうちの雑誌がもっているといっても過言ではない。 私たち編集者は「出ていただけるだけでもありがたいです」っと、なるべく機嫌をそこねないように持ち上げつつ、うまく使うというスタンスなのだ。 くわばらくわばら。 「今回はバンケット特集でいこう」 パリーさん。(ミエっぱりからつけた私とゆい子の間のあだ名) ちっちゃいキャバリエを抱いてテラスでコーヒーを飲むその姿は、まさに業界人。 あいさつもそこそこにサングラス越しに力強くそういわれると。 「はい。承知しました」っていうしかないじゃん。 今、私の目は死んでるんだろうな。 「ところでスズちゃん、新しい男できた?」 へ? 何を突然。その根拠は? 「なんとなくそう思っただけよ~」 一瞬サングラスをずらすとぎょろりと大きな目。 なんか、こういう一瞬一瞬のしぐさがこわいんだよね。 いや。新しい男できてないです。 むしろ、今までの男と急にセックスができなくなってピンチです。 「へぇ~。そういうのって新しい男ができる前触れみたいなものなんじゃないの?」 そうなんだろうか。
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