第7話 ゆれる

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編集部にかえると、にやにやするゆい子がさっそく食いついてきた。 「パリーどうだった?」 だいたい私とゆい子とどちらかが、打ち合わせの後は「今日のパリー」と題して2時間は盛り上がってしまう。 キャラが濃いからなのか、時代とマッチしているからなのか。 いい感じのわが道をいきますっプリがTVでうけてて。 その世界観にいつも圧倒されてしまうんだけど。 いちいち鼻につくもんでついゆい子とパリー話をしてしまう。 だけど、うらやましくないとはいえよくよく考えてみればこの人2回も結婚しているわけで、一回も結婚したことがない私とゆい子のネタになっているとはいえ、どちらが勝ち組なのか?っと言われたら返事に困ってしまう。 パリーみたいな人生が幸せなんだろうか? 「金って意味ではそうだよね。やっぱり自分の専門性があるってのは売りになるわね」って、ゆい子得意の分析。そっからゆい子が凝っている占星術の方へ展開していき。パリーは獅子座でなんたらでと始まった。こうなってくると、ゆい子の独壇場で占星術おたくっぷりがいかんなく発揮される。 私はゆい子の話に適当に相槌を打ちながらこっそりと携帯を見た。 そう。そういえばきのうムツオとできなかったんだ。 フォローのメールでも送っておいた方がいいのか。 でも、メールの文面が思いつかない。 もやもやとメールと書いたり消したりしていると同じタイミングでメールを受信した。 『ひさしぶりに、またご飯でもいきませんか?』 蓮だった。 一瞬ジュワッと自分の顔が熱くなる。 誰かが見ているわけではないのに恥ずかしさを悟られないようにとっさに携帯を裏返した。ドキドキと心臓が鳴る。 なんでこんなに動揺しているんだろう。
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