第8話 デート

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原宿の小道を入ったところに、少し蔦がはった和テイストの小さなお店があった。粋なライトアップがお店を彩っている。 ここにこんなお店があったんだ。元気なお店が多い原宿で、落ち着いた和な雰囲気が新鮮。 「いらっしゃいませ」 店主らしき女性が着物で出迎えてくれる。和モダン。 こちらへどうぞ。 腰掛けられる畳のスペースがあって私たちはそこに腰かけた。 お客さんは誰もいない。店内には花がいけてあるくらいでほとんど何もない。 ほんとうに静かでシンプルで何もない不思議な空間。 思わず立ち上がって窓をのぞくと中庭が見える。そこにも美しいライトアップがほどこされていって中庭のあちこちに白、ピンク、黄色。たくさんの花が見える。 お庭の花をいけてるなんて、素敵。 そう思ってたら着物を着た店主がお茶を運んできてくれた。 クリーム色の湯飲みに鮮やかなグリーンのお茶。 しばらくお待ちください。 そういうと奥に消えていった。 たおやかなしぐさ。まるでどこかの物語に出てきそうだった。 「ねぇ。ここ何のお店?」 へへへ。ちょっとね。 音もない店内に自分の声が響きわたってしまいそうで、思わずひそひそ声になる。 15分もたったころお店の人が出てきた。小さな袋を蓮に渡している。 買い物は済んだようだけど何の買い物だったのか内緒みたい。 なんで、こんな不思議なお店に私をつれてきたのかな? 蓮の行動も不可思議だったし何のお店なのかも不可思議。 何がなんだかわからない謎が残ったまま、私たちは渋谷に移動した。 歩いて渋谷まで移動するなんて。 いつ以来だろう? ひさしぶりのことなんだけどそれがまた新鮮。 なんか食べたいのある? なんでもいい。 なんでもいいっていうのが一番困るこたえなんだろうけど。 「一回行ってみたいお店があるんだけど、そこに行ってもいい?」 へぇ~。20代の男の子に連れて行ってもらえるお店って。 どんなところなんだろう? 興味あるわ~。 話しながら歩いてみると渋谷まであっという間。 ハンズ前を通り過ぎて小道を入った2階に連れて行かれた。 大きなガラスのドアから見える店内は広くて、木のテーブルが並んでいる。 しっかり紳士の顔になっている蓮の誘導で店内に入った。
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