第9話 驚き

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今回はイタリアン。 ディナーって雰囲気の落ち着いた店内ではカップルがワインを楽しんでいる。 「何食べる?」 あどけなく見えた蓮の顔が今日はやけに大人に見える。 ムール貝や生ハムのサラダにプラスして、 思わず私も普段頼まないワインをたのんでしまった。 料理のおいしさなのか蓮に浮かれてるからか。 男の人って印象が変わるんだ。 「これもおいしいよ」 そうサラダをすすめてくれる蓮。 仕事をするならデザイン系の仕事につきたい。空間デザインに興味があるから、このお店の中に興味があったんだーって。 なんかいろいろ感心しちゃう。 蓮のスウィートな話に私はうなずけるだけうなずいた。 それからデザートに甘いモンブランジェラートをたのんでさらに甘い気分へと自分を追い込んでみたりして。 「これ」 蓮はハニカミながらさきほどのお店で買っていた小さな紙包みを取り出して私の目の前に置いた。 それは、わたしに? 濃いブルーとカーキの油紙の袋をあけると美しい更紗紙にくるまれた小さな包み紙。 包を丁寧にあけると中からは銅でできた長方形のしおりが出てきた。 手にのせると少しひんやり。でも人の手でつくられたぬくもりが伝わってくる。 彫刻がほどこされていて、よく見るとそれは人の横顔になっていた。 女性……。 髪の毛を横だけ編んでひとつにまとめている。 私の今の横のラインとそっくり同じだ。 ていうかこの顔私に似てる? ん? っていうかこれ私じゃない? 私は目を見開いて蓮をみる。。 蓮はニコニコとうなずいている。 え? あのときつくったの? どうやって? そんな短時間で? と、矢継ぎ早に質問したあと。 しばらくなかなか言葉が出てこなくなった。
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