第1話 発端

3/4
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
私が勤務する弱小出版社。 なんの因果か結婚に希望がない私が結婚雑誌の編集部にまわされてしまった。 広いフロアの編集部の中で、隅~っこに隔離されて3人だけで構成されている。 編集長も結婚にはまるで興味がない独身アラフォー男性。 あ、でも。恋人はいるよね。同じく若いイケメンの恋人。つまりは女性そのものに興味なし。 それと同じ年の田中ゆい子、35歳。 私たちとは違って結婚願望しかない女性。 なのに男性とは一度もつきあったことがないという女子。男性とつきあったことないって、いわゆるつまり処女ってやつですよ。 でも、本人はとくにそのことについて気にする様子もなし。 結婚に望みがない私と、結婚を夢見る処女と、女性にまるで興味がない男性が編集長を勤める不思議なチーム。 ここに配属になってかれこれ3ヶ月。 結婚に希望がもてないものの、毎回結婚をテーマに雑誌をつくっているので、嫌でも結婚を意識せざるを得なくなってしまう。 結婚かぁ~。 奥さんがいる男との恋愛って、結婚ができない言い訳ができるんだけど、ちょっと寂しいんだよね。だって週末は会えないしお泊まりもほとんどなし。 会えるのはお店が休みの水曜日の夜だけ。 別居状態だって言ってた年上の奥さんとはなんだかんだ別れないし。 やっぱり日曜日に一人でご飯を食べるのは寂しい~。 編集長 「あら、あんた。頭のてっぺんに白髪発見よ!」 私 「えぇ~、やだ! いつの間に白髪!」 編集長 「だいたいあんた。不倫のくせに、不倫のうまみを一つも受け取ってないジリ貧不倫。そろそろ潮時なんじゃないの~?」 朝からいきなり編集長に指摘され切実にささる今日この頃。 ううう。そろそろ私もアラサーからアラフォーへの微妙なラインだもんね。 誰か、他にいい男いないかなぁ~。 ゆい子 「鈴花が結婚に希望がないのはわかってるんだけどさ。今の鈴花、不幸オーラ出てるよ。やっぱり女の幸せって結婚にあると思う!」 くっそー。処女のゆい子にまでそんなこと言われて返せないくやしさ。 ほんとに誰か新しい男さがそっかな。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!