第11話 不戦敗

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高校の時のクラスメイト。 名前はたしか、けい子。 同じクラスにいるけど同じグループにはいない。 仲が良いというほど一緒にいたわけでもなかったけど、格段悪いわけでもなかった。 今でも特別に連絡を取り合ってはいなかった。けれど、こうして卒業以来10年以上ぶりに会ってみるとなつかしい顔にほころんでしまう。 わぁ、偶然! 懐かしい。久しぶり~。 どこ住んでるの? 今日は時間の融通がきくし、立ち話もなんだしちょっとお茶でもしようかって話になった。 なんか、甘いもの食べたくて。 パンケーキのおいしいお店。 私たちはすぐ近くのハワイアンなカフェを見つけた。 お互いに高校を卒業して10年以上たってからの再会。 久しぶりにあったけい子は女性としての貫録、というか落ち着きが増しているように見えた。 「私、結婚したの」 だからか~。 もともとおっとりとしたイメージだったけど。 間を持たせたおだやかな口調や終始絶えない口元の微笑みになんか余裕を感じる。 私もざっくりと自分の経緯を話して今の職場がここの近くだということと、けい子の旦那さんがこの近くで働いているという偶然に盛り上がった。 「今日はね旦那さんにお弁当を届けにきたのよ。せっかく作ったのに忘れていったから」 食べてもらえないなんてくやしいじゃない。 ふわふわのパンケーキにナイフを入れて微笑むけい子は、女の私から見ても美しかった。 なるほど。こういうのが愛される女性なんだな。 「鈴花はどうなの?」 結婚してるの? けい子の幸せ話の後に自分の話をするなんて。けど。 ハワイアンな店内とおだやかなけい子の微笑みにほだされて、 私はありのままの状況を説明した。
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