第14話 失恋

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仕事を休んだのははじめてだった。 さいわい打ち合わせやアポなど会社へいく必要のある仕事が入ってなかったし。 最低限迷惑をかけずにゆい子に申し送りだけした。 「風邪ひきました」 という私の言い訳にかぶるように 「何? 失恋?」という編集長の大きな声が受話器越しに聞こえてくる。 この人にはかなわないな。 風邪だから。 と、ゆい子に伝えて逃げるように電話を切った。 も~何にもしたくない。 もうすぐお昼だというのにパジャマのまま。 ぐずぐずと部屋の中でTVをつけたり消したり布団にごろごろしてみたり。 ご飯を買いにいくのもめんどうくさくて冷蔵庫をあけてみたけどカマンベールとビールのみ。何か作れそうな物が見あたらない。 とほほ。これじゃあ誰も私と結婚したいって思わないかもね~。 目の前にあるビールに手がのびる。 まだお昼もまわっていなかったけど、いっか。 一杯、飲んじゃおう。 プシュ~っといい音がして、私はいっきに半分くらい飲み干した。 はぁ~。いっきに体が熱くなって酔いがまわる。 仮病で会社休んで昼前からビール飲んで。ぼさぼさ頭にノーメーク。 きのうはどこをどうやって帰ってきたのか覚えていなかった。 夕飯を食べた覚えもないけどおなかもすかないし。 お風呂も入らずに布団にころがってTVをつけっぱなしでとりあえず寝た。 なんか我ながらすごいダメさ加減。 そう思ったらひとりでに笑えてきた。 ははは。ダメだこりゃ。 はははは。笑いながら手なんか叩いたりして。 そうして笑っていたら涙が出てきてそうすると今度はだんだん泣けてきた。 うわぁ~ん。 涙は後から後からこみ上げる。 それをティッシュペーパーで吸い取りながら流したいだけ流した。 くやしいよ。 かなしいよ。 ときには声を出したりして。 きのうは泣けなかったから。 私は時間を気にせず泣けるだけ泣いた。 昼間っから飲んだおかげで私はすっかり酔いつぶれた。 一人で飲んで、泣いて、トイレにこもって、吐いて、泣いて。 そんなことをくりかえして気がついたら眠っていた。 なんかこういう歌なかったけ? どっかの歌詞なさながらの失恋っぷりだ。 できるなら明日っていう日がこなければいいのに。 そんなつぶやきさえも歌の歌詞にありそうだわ。 もうお日様なんてのぼらなきゃいいのに。
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