24人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
「ひさしぶり」
そういってあらわれたのは、バサバサと目にかかりそうな前髪がいかにも独身という雰囲気の男だった。
初めて見る男っぽい光一に懐かしさよりも新鮮さを感じた。
元気だった?
落ちついた声。声だけはそのまんまでやっぱり懐かしい。
「ひさしぶり~」
緊張からか私から出た声は酔っぱらいの見本のようなハイトーンで自分でも恥ずかしくなった。
「実はけい子から鈴花の話を聞いて。どうしても会いたくなってさ」
横でうなずくけい子。
「じゃあ、わたしたち今日は帰るね。あとはお願いしていいかしら?」
ええ~、もう帰るの~?
急に二人っきりにされても困る!
と、だだをこねたものの。
10年以上ぶりの再会。ゆっくり光一と話をしてみたかった。
私の本心を見抜いてくれたけい子と旦那さんに感謝を伝えると、二人は気を利かせてくれた。
私はお酒の力をかりて、ひさしぶりの光一と向かい合っていた。
何年ぶりなんだろう。ポツリポツリとつぶやく彼の話し方。懐かしくて、心地よくて、少しドキドキした。
「ずっと後悔してた」
私たちが別れた理由をあれやこれや言ってみても仕方がない。
でも、今だから言える。今だからゆるせる。
あのとき言えなかったお互いの感情。
ポツポツと、私たちはお互いの時を取り戻すように言葉を交わした。
「思い出してみれば、光一と私の結婚観が崩れたのよ……」
最初のコメントを投稿しよう!