帰るべき場所

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午前最後の講義が終わると、教室は安堵からざわめいた。 昼食をとるために、生徒たちがそれぞれの時間を過ごす。 ケイトは席を立ち、一目サラを見ようと彼女のクラスを探して歩き出した。 東大クラスは上の階のはずだ。 階段を上り、目星を付けていた教室に向かった。 「その前にトイレ……」 授業を受けた緊張感がほぐれ、急に生理現象を催した。 便器の前に立ち、用を済ませていると、二つ離れた場所にいた男子二人組みの会話が聞こえてきた。 「帰りに行こうぜ!」 「金がない」 「あの店は粒ぞろうでハズレなしだから」 「いくらだっけ?」 そんな会話で、ケイトは何を話しているのか勘付いた。 現役生と卒業生、目標は同じでも、何かが違う。 彼らと少し離れた所で用を足した。 好奇心から、スマホで風俗店の女の子達を調べたことがある。 意外なほど彼女たちはキレイで活き活きとしていた。 誰かに聞いたことがある。 昔とは違い、彼女たちの多くはタレント事務所にも所属していて、グラビアの仕事もしていた。 中にはそこからテレビタレントや女優、歌手へと羽ばたいていく。 もちろん大半は、夢半ばで一線から消えていくことになる。 「忘れられないんだよな……」 「またその話しかよ!」 「そう言うなって。彼女は俺を男にしてくれたんだ。しかもMカップだぞ。大きくて柔らかいオッパイ、何で辞めちゃったんだろうな……」 二人はケイトよりも先にトイレを出て行った。 Mカップと聞いて、ふとユカリのことを考えた。 あれだけ大きな胸をしていれば、どこにいても目立つだろう。 男たちが彼女に声を掛けても可笑しくはない。 「あの店に来る前ってどこにいたんだろう?」 そんなこと、一度も気にした事がなかった。 ファスナーを上げて、手を洗いながらユカリとの会話を思い出してみた。 知っているようで、ユカリのプライベートは何も知らない。 そもそも何処に住んでいるのかも分からない。 トイレを出で、廊下に溢れ出た若者たちが目に入る。 その中にサラがいて、見知らぬ男子と親しげに話しているのが見えた。 楽しいのか、サラは笑顔を浮かべて相手を見つめている。 時々、サラは相手の肩を叩いたりしていた。 余りの親しさに見てられなくて、ケイトはそのまま階段を降りた。
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