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街には、タイプも年齢も様々な娘たちが歩いていた。
ケイトの好きな顔立ちもいたし、魅入ってしまうスタイルの娘もいる。
「ここに居るのだろうか?」
大学生となり、社会人となり、いつか誰かと結婚するだろう。
その相手がこの街の何処かに居るのだろうかと想像してみた。
「目がクリクリとして、優しくて、胸が丸くて……」
ケイトは本気で誰かを好きになったことがない。
それが仇となり、恋する気持ちを臆病にさせた。
不意に歩くのを止めて、道脇にあるベンチで一休みした。
もしもサラが素っ裸で迫って来たら、彼女を心から抱きしめられるのか分からない。
好きになるのが怖かった。心が傷つくのを本能的に避けていた。
目の前にいたナンパ男が、通り掛かった娘を口説き落として二人でどこかに行ってしまった。
彼は彼女を愛しているのだろうか。
そんなはずはない。そう信じたかった。
この後、あの二人はホテルにでも行き、ひと時を過ごす。
でもそれだけだ。それだけだ。
愛するという事が、そんなことではない事くらいケイトにも分かっている。
また歩き出した。行き先などどこでも良かった。
今は少しサラのことを忘れられたら、ケイトも気持ちを落ち着けられた。
フラフラと裏通りに紛れ込んだ。一件の店先に若い娘達が制服姿で笑って見つめている写真パネルが飾ってあった。
どう見ても本物の学生ではないだろう。
その中に、ユカリに似た娘が紛れていた。
「この娘って……?」
そんなわけ無かった。
ユカリがこんな店で身体を売っているはずはない。
店に入る勇気もなく、ケイトはその場を立ち去った。
「なんで身体を売っているだろう?」
例え夢を叶えるためだとしても、何か大切なモノを失ってしまう対価にしては釣り合わない気がした。
いつの間にか西の空がオレンジ色に染まっていた。
街には、まだ沢山の娘たちが愉しそうに行き交っていた。
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