第1章

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おっ、いた。 わたしの♪わたしの♪想いを込めたチョコレート♪あなたの口に合いますか♪ 私の妹は歌っている。好きな子にあげるらしい。 散歩して気合入れてくるって外を飛び出したらここにいたのだ。 声をかけるか。 「よう?寒くないのか?」 チョコレートを砕きまし……♪ 「……お兄ちゃん?」 「帰ろうか?ここ、絶対夢が叶う夜景って俺が教えたもんな」 「うん」 嘘である。私は昔、彼女の失恋時にも教えたのに。彼女も分かってるはずだ。 「お兄ちゃん、これ」 「えっ?」 彼女はピンクの箱を渡してきた。 「俺に与えていいのか?」 「だって私が好きなのは兄ちゃんだもん」 「そうか」 「泣いてるの?」 「泣いてないよ。このチョコ、ここで一緒に食べて帰ろうか」 「うん」 また嘘をついてしまった。彼女が作った甘いチョコを夜景を見ながら涙が流れていた。 この日は私の失恋日だった。
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