卒業写真を君と

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証明写真の問題は解決したが、今度は【卒業写真】だ。 クラスメイトたちは『知らない奴に見せたら新田と一緒の写真は心霊写真だと思われるぞ』とはしゃいでいた。 俺にしてみれば卒業写真ぐらいみんなとちゃんと写りたい。 「別にいいじゃないか。そういえばクラスに透明人間がいたなって、みんなに思い出してもらえるんだから」 俺なんて影も髪も薄いから忘れられるよと嘆く須永のことは、たぶんみんな一生忘れない。 でも、須永の言うことも一理ある。 俺がみんなに覚えていてほしいのは、俺の顔じゃない。 俺という人間がいたこと。 姿は見えなくなったけど、俺という存在をみんなの記憶からは消してほしくない。 「次は私たちと撮って」 卒業式の後はちょっとした撮影会のようだ。 みんな俺と一緒に撮りたがる。あとで話のネタにするんだろう。 思いっきりうんざりした顔をしても写真には写らない。 そろそろ勘弁してくれよと横を向いたら、多田が男と並んでいるのを見てしまった。 あれは陸上部の佐藤だ。あいつは足も速いが手も早い。 嫌がっている多田の腰に手を回してツーショットを撮ろうとしている佐藤に俺はカッとなった。 「悪い。あとは裸の俺と撮ったってことにして」 順番待ちをしていた奴らにそう言うと、みんな納得してくれた。 初めからこうしていれば良かった。 「多田、お待たせ」 ベリッと佐藤の手を多田の腰から引きはがしながら声をかけると、多田はキョトンとしている。 佐藤の手に俺のスマホを握らせて、桜の木の下で多田と並んだ。 渋々スマホを構えた佐藤は構図にこだわる性質のようで、もっと左に寄ってとかもうちょっと下がってとかうるさい。 「多田、許して」 耳元で囁いた声に「え?」と多田はこっちを向いた。 すかさず唇を重ねたところで佐藤がシャッターを押してくれた。 もちろん彼には見えていなかったんだけど。 体は正面を向いて首だけ横を向けば、顔がどっちを向いているかわからないのが透明人間のいいところだ。 「あー、今俺、目つぶっちゃった。もう一枚撮って」 そう頼めば、人のいい佐藤は仕方ねーなとまたスマホを構えてくれる。 「に、新田君、今のって……」 赤い顔で目を泳がせている多田は俺の気持ちがわかっていなかったらしい。 「わからなかった? じゃ、もう一回」
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