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「あー、今度は多田ちゃんが目つぶっちゃったね。もう一枚行くよ」
佐藤、おまえっていい奴だな。
しっかりまぶたを閉じてキスを受け入れてくれた多田にニヤニヤが止まらない。
「に、新田君。どういうつもりで……」
「多田が好きで好きでたまらないっていう俺の気持ち。迷惑?」
「迷惑だなんて! 私も新田君が好き」
飛びついてきた多田を抱き締めて、頭のてっぺんにもキスを落とした。
「俺がずっと透明のままでも?」
「キスするときにちゃんと予告してくれるなら問題ないよ」
ちょっとはにかんだように笑った多田は最高に可愛くて、調子に乗った俺はまた囁いた。
「じゃあ、もう一回」
「おーい、新田。何やってるかバレバレだぞー」
みんなに冷やかされて真っ赤になった多田の顔を、慌てて俺のブレザーで隠してやった。
「この写真は永久保存版だな」
「目をつぶった私の横顔が?」
「一応、二人のキス写真だから。見えないけど」
「ん。感触を思い出す?」
「どうだったかな。ちょっと確かめさせて」
気が早い俺が今、気になっていることは、俺の子どもも透明なのかなってこと。
もしそうなら、俺たちは授乳やおむつ替えでちょっと苦労しそうだ。
俺の制服の衿をキュッと握って、必死でキスに応える多田の手を優しく掴んだ。
こいつと一緒ならきっと大丈夫。
「なんか溶けちゃいそう。私も透明になったりして」
うっとりした顔で俺を見上げた多田に俺はフフンと笑った。
「それはちょっと困るな。感触だけじゃなくて、多田の全部を見たいから」
ボンと火を噴いたように赤くなった多田を抱き寄せて思った。
二人して透明人間になったら、それはそれで楽しいだろうけど、と。
END
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