変わったことと変わらないもの

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一難去ってまた一難と言うか。 学校に普通に通えるようになってホッとしたのも束の間。 新たな壁が立ちはだかった。 【証明写真】だ。 大学進学を考えている俺は、入学願書に貼る証明写真が撮れない。 いや、撮れるには撮れるが首から上は背景が透けてしまうから、証明にならない。 これには学校の先生たちも頭を抱えた。 小麦粉をつけたらどうか。 デスマスクのように石膏を塗ってみてはどうか。 緑色の化粧用パックなら家にある。 職員会議で俺のために意見を出し合ってくれたのはありがたいが、受験当日もそれをやれと言うのか? 石膏は固まるだろうが! 仕方なく俺は母に付き添われ、大学病院に足を運んだ。 透明になった原因を突き止め、治すためだ。 真っ先に疑われたのは放射線被ばくだった。 まあ、これは俺のクラスメイトたちの仮説の中でも支持者が多かった。 アメコミのヒーローにそんなのがいたような気がするというのがその理由だ。 ちなみに、他の仮説は宇宙人に拉致されて何かされたとか、世界を救うために突然超能力が目覚めたとか。 しかし、放射線量も血液検査も尿検査も異常なし。 レントゲンやCTやMRIでは何もわからなかった。写らなかったから。 つまり、原因不明。 せめて頭だけでも見えてくれたら証明写真が撮れるのに。 こういうとき、映画だったらマッドサイエンティストが助けてくれるんじゃなかったっけ? そんなことを考えていたせいか、俺の足はいつのまにか生物室に向いていた。 まあ、他の理由もあるけど。 放課後の生物室にいるのは、いつも3人だけだ。 生物教師の片倉と、生物部部長の飯塚。それに、副部長の多田。 他に部員が7人いることになっているが、誰も見たことがない。 彼らも俺と同じ透明人間というわけではなく、単なる幽霊部員だ。 「お、新田じゃないか」 ニコニコと愛想よく声を掛けて来たのは去年同じクラスだった飯塚だ。 丸顔に団子っ鼻の彼は、顔が汚れると力が出なくなる正義の味方に似ている。 もっとも体もでっぷりしている飯塚はマントがあっても空を飛べそうにはない。 片倉先生と多田は一つの顕微鏡を交互に覗き込んでいた顔を上げて俺を見た。 「先生、何かいい方法ないですか?」
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