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「新田君、さよなら」って、ちゃんと俺の目を見て。
あの子、よくわかったなってみんなが騒ぐ中、俺は確信した。
多田は俺を見ているんだ。
透明人間になっても多田の熱い視線は変わらない。
俺がラグビー部を辞めたから、もうグラウンドを見下ろす多田はいない。
ホントわかりやすいやつだ。
授業中、俺が多田を見ると、向こうもこっちを見ていることがよくある。
残念ながら目が合うことはないが、多田の視線が興味本位のものじゃないことは確かだ。
「薄毛の男が恋愛対象になる確率は何パーセントか知ってるか?」
前髪の後退を気にしている須永が自分の頭をマッサージしながら聞いてきた。
「さあな。透明な男よりは高いんじゃないか?」
俺がそう言うと、周りにいた男どもがドッと笑った。冗談を言ったつもりはないが。
透明人間は多くの女子にとって恋愛対象外らしい。
俺が惚れたのがそんな女じゃなくて良かった。
あいつは俺がハゲでもデブでも透明でも、変わらず俺を好きでいてくれるに違いない。
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