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ガチャリ。
「・・・ただいま。」
返事は返ってこない。
分かっている。
誰もいないことは。
ランドセルを自分の部屋に置いてリビングへと向かう。
テーブルには冷たい食事と置手紙。
『温めて食べてね』
お母さんとの唯一のコミュニケーションだ。
こんな僕のことを皆可哀そうだと言う。
でもこんなことは慣れたものだ。
父親のいない家庭を支えるためには仕方のないこと。
寝るまでにお母さんは帰ってこなかった。
次の朝も僕が目覚める頃にはもうお母さんは出掛けていた。
小学校に行っても話す友達はいない。
窓側隅の席に着くと必要がなければ動かない。
午後の授業、後ろからぞろぞろと児童たちの親が入ってきた。
そういえば今日は参観日なんだ。
当然僕のお母さんはいない。
クラスメイトたちは自分の親に振り向き手を振ったり、頬を赤くして一切後ろを向かなかったり様々な反応を見せている。
授業は国語。
選ばれた児童が『お母さん』というテーマで作文を読んでいく。
緊張して声が震えたり自信満々に読んだり。
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