第1章

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周りを気にせず好きな事ができることがわかった僕は遊び呆けた。 1週間が経つ頃には罪悪感も無くなりただただ欲望を満たした。 でも楽しかったのは最初だけ。 今まで出来なかった楽しいことも、毎日続けていたら飽きが来た。 やりたい事ももう何も思い付かない。 気が付いたら自分の家に向かっていた。 ガチャリ。 「・・・ただいま。」 鍵は開いており、一応ただいまと言ってみた。 自分の部屋に向かうと中の物は存在していたが周りからは透明に見えるのだろう。 ポゥッと薄れて机や玩具が見えている。 リビングへ向かうとお母さんがいた。 1人で、ご飯を食べていた。 やっぱり思った通りだ。 僕の存在が消えたおかげでお母さんは無理をして働かずに済んでいる。 でも何か思っていたのとは違う。 もっと、幸せそうにしていると思っていた。 なのにお母さんの顔はどこか寂しげで、疲れている。 「・・・はあ。何かしら。凄く大事なことを忘れているような気がする。」 お母さんはポツリと呟いた。 どうして。 僕は存在ごと透明になったはず。 学校の名簿からも消え、誰の記憶にも目にも映っていないのに。
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