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お母さんの記憶にはまだ僕が残っていたの?
もうどこにも存在しないと思っていた。
だってもう薄れていたんだ。
自分の存在が、自分自身の記憶からも。
気づいた時には自分の名前を忘れていた。
僕は、誰なの?
ねえお母さん教えてよ。
僕の名前を。
胸を締め付けられる感覚と共に頬を一滴の涙が流れ床へと落ちた。
ーーピチャッ。
「何の音かしら。」
お母さんは音に気付いた。
涙の落ちた場所にしゃがみ込む。
「・・・濡れてる。」
お母さん、気付いて。
僕はここにいる。
しゃがみ込んだ母親に思わず抱き付いた。
「っ!・・・。」
最初は驚いた様子だったが、すぐにお母さんは受け入れた。
「お母さん、僕はここにいるよ。ねえ教えてよ。僕の名前を・・・。」
届くかわからない声を出した。
「誰か、いるのね。私を抱き締めてる。貴方は・・・。」
急にお母さんは僕を抱き締め返した。
「何故かしら・・・。今まで忘れていてごめんなさい!貴方はマコト、私の息子よ・・・!」
マコト。それが僕の名前。
消えていなかった。
僕は透明なんかじゃない、ここにいる!
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