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さて、ここから明美は困り果てた。
旦那を殺したはいいものの、これからどうすればいいか分からない。
このまま放っておけば腐って臭いでバレてしまう。
だからといって浮気相手が手伝ってくれるとは限らない………。
しかし、このままでは確実に明美が犯人だとバレてしまう。
明美がどうしようかと必死に考えていると、突然インターホンが鳴った。
その音に明美は思わず身体が跳ねたが何とか平静を保ち、そっとドアを開けるとそこには一人の青年が立っていた。
年の頃は20歳前半だろうか、帽子を被っているが、整った顔立ちをしており少し古めかしいデザインの制服を身にまとっている。
「竹内明美様ですね、手紙のお届けです」
「手紙?」
青年が差し出した手紙を受け取ると、その封筒は真っ黒で宛先人は誰も書かれていなかった。
「あの、宛先人って!………あれ?」
明美が顔をあげると、そこには既に青年の姿はなかった。
不審に思いながらも明美は部屋に戻り夫の死体の隣で封を切った。
手紙の内容は、恋人を殺してしまった男が恋人の死体を井戸に捨てたらいつのまにか消えていたという怪談だった。
どんどん人を殺して井戸に落としていくが死体はいつのまにか消えている………。
ある日、自分の親を殺して井戸に捨てたが井戸から親の死体はいつまで経っても消えなかった。
そこで初めて男は親が遺体を片付けてくれたことを知ったという怪談………。
手紙を読み終えると明美は、そうだ!と思いついた。
夫の所有する山に古い大きな井戸があったのを思い出したのだ。
あそこなら所有地だから誰も入ってこないし誰にもバレない!
明美はこの手紙のおかげだわ!と手紙を胸に抱きしめて感謝をしたのだった。
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