井戸の手紙

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明美は早速、夫の体をバラバラにすると大きなボストンバッグに身体の一部を詰め、誰もいないのを見計らってから数回に分けて夫の体を外に運び出し車に乗せた。 そこから車で山へと向かい、明美は重いボストンバッグを抱えながら井戸へと向かうと、夫の亡骸を井戸の底へと放り投げた。 大きな水音を立ててから沈んでいくバッグを見て、明美はニヤリと笑みを浮かべると真っ暗な道を浮かれ足で帰っていったのだった。 そこから明美の行動は早かった。 夫が来ないと会社から電話が来れば、夫は会社に行くと言って出て行ったと嘘を吐き、そこからは警察をもご自慢の涙で騙しあっという間に行方不明の夫を探す健気な妻になったのだ。 その間にも表では呼べない裏の業者に部屋を清掃してもらいながらも、明美は浮気を繰り返したのだ。 幸いにも大企業のエリートだったということもあって、金は沢山ある。 旦那もいなくなった今、高級なマンションに住まいエステやネイルサロンに通い常にブランドを身にまとい浮気を何度も繰り返す………。 明美は今こそまさに自分が幸せの絶頂にいるのだと信じて疑わなかった。 この贅沢な幸せが永遠に続くものだと信じていた。 しかし、人と言うのは欲が出てしまうもの………。 ある日、明美がショッピングに出かけていると偶然大学時代の同級生に出会った。 その左手の薬指には、高級ブランドのリングがキラリと輝いており話を聞けば、もうすぐ結婚するのだと照れながら教えてくれた。 しばらく話していると、同級生の婚約者が迎えに来たのだが、その顔がまた明美の好みの顔だったのだ。 聞けば、さる大企業の御曹司だとかで明美は瞬時に同級生の婚約者が欲しいと思った。 早速明美は婚約者にアプローチしたのだが、身持ちが硬いのか婚約者は全く明美になびかなかった。
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