井戸の手紙

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「よ、いしょ………!」 両親を引きずり遺体を井戸へと放り投げる。 この作業もだいぶ慣れてきたなと思いながら井戸を眺めると、遺体は水にプカプカと浮かびながらやがて沈んでいった。 それを見届けてから明美が帰ろうと踵を返した時だった。 カリ………。 「ん?」 一瞬、何かを食べる音が聞こえ振り返るとそこには誰もいない。 気のせいかと思い歩みだそうとした瞬間、再び………。 カリ、コリ………。 今度はハッキリと聞こえた。 恐る恐る明美が振り返ると、音の発生源は井戸の中からだった。 コワイ、だけど気になる………! 明美はゆっくりと古井戸に近づくと、恐る恐る井戸の中を覗き込んだ。 暗い闇が広がる井戸、わずかな光で見えた先にいたのは大きな人だった。 しかし、その姿は人のようで人ではなかった。 大きく飛び出た目、異様に長い手足を縮こませながら、大量に生えた牙で両親の死体を食べている化物………。 先ほどのカリコリという音は、化物が骨を噛み砕いている音だったのだ。 明美が思わずヒィ!?と悲鳴をあげると、化物はゆっくりと明美の方を向いてニィ………と血のついた口に笑みを浮かべた。 そして、その長い手を俊敏に動かしあっという間に明美を掴むと、井戸の底へと引きずり込んだ。 生臭い臭いが広がる井戸、側面には大量の苔が生えており明美は逃げ出そうと必死に井戸をよじ登ろうとするが、滑って登る事ができない。 そんな明美の後ろでは、鋭い牙が沢山生えた口を大きく開けた化物が、ゆっくりと近づいていたのだった………。
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