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「ったく。
何なんだよ、一体……。
う……」
家から飛び出すと俺は思わずうずくまった。
『今日取引先行きたくないな』
『やべ、レンタル返すの忘れてた』
『眠い……』
渦巻く人の感情が俺の頭の中に次々と入ってくる。
「……くそ。
うるさいぜ」
可笑しくなりそうな精神をグッと堪え俺は立ち上がる。
「にゃー……」
「黒猫?」
いつの間にか俺の目の前に黒猫がいた。
綺麗な黒い毛皮に凛とした金色の瞳。
何だか神秘的な猫だ。
『助けてくれてありがとう』
舌を少しだ⇩黒猫の声が聞こえてきた。
「お前この間の猫か?」
数日前俺は黒猫を助けた。
まさかと思うが……。
この猫か?
『「お前」ではない。
ネネにはネネという名前がある』
ムッとして黒猫は自己紹介をする。
「ネネ。
俺は今、ネネと喋っているのか?」
非現実的すぎる。
人の心がわかるようになった上に、猫とまでお話ができるようになるとは……。
『そうだよ。
ネネと喋ってるの。
そしてみんなの心の声が聞こえるようになったの』
ネネは俺の期待通りの答えを返してきた。
「君の仕業か?」
ネネをジッと見る。
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