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私はここに来て1年としばらくを迎えた
私は平成の世に生まれ
就職や結婚といった社会の荒波に全く揉まれることなく人生を閉じた
さらに言うと大学の独自試験の3日前に嘘だろうと言われてもしょうがない脳血管疾患でこの世を去った
最後に見たのは驚いた先生の顔と生きてるけれどもう言うことをきかない自分の体だった
そうしてどういうわけか私はまた生きている
しかしそれは違う時代で変な能力をもって
「汐!!」
「うるさいよ、新之助。そんなとこから毎朝たっけらなくたって1人で勝手に起きるさ」
ちなみにここは二階である。階下には新之助が仁王立ちで構えている。
「だって汐を俺が起こさないと1人で勝手にどっか行くねんで、ひどいやんかなあ」
「そらそうやな新之助。それに毎朝こういうのも迷惑とちゃうからなんて思う人もおらんしな」
「そんな薄情な…」
「朝からそんな茶番せんでええから、汐はさっさと下おりて、新之助は座る!弥太郎さんはできたご飯並べて!」
これは髪結い夫婦の家での日常である
私がここに落ちてきた日
右も左もわからない私を気にかけて家に連れ帰ってくれたのは弥太郎さんだった
その日は寒い冬の夕方で
人はまばらにしかおらず
蹲る私に声をかけお酒を飲みに行った
そして右も左もわからずここに突然いるというと家に来いと快く言ってくれた
弥太郎さんはこれも何かの縁だというが家に着くなり嫁の怒号が走る
弥太郎さんはかなりいい人らしく、ものでも人でもしょっちゅう拾ってくるのは周知の事実だったが女を連れてきたためしはなく
嫁の芳野も流石に包丁片手にぶち切れた
「よ、芳野…ほら、これもなにかの縁だよ」
「はあ??弥太郎さんこちらさんは女どす」
「は、はあああ…!!??」
ということで来た当初の恰好が男のものだった私は
女であるにも関わらずそのまますごし
弥太郎さんに誤解を与えてそうそう解決したが
女物の服もないし金が要るのでその後も男のなりで過ごした
そしてこの夫婦の子供の新之助と過ごしたり
訳の分からぬ能力があることがこの冬に発覚したので
それを活用して働いたりと何気に充実した日々を京で過ごしていた
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