バレンタイン コンチェルト

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『先月行った展望台、覚えてる?』 夕方、彼女から来た初めてのメールは、こんな内容だった。 『覚えてるよ』 聞くからには何かあるんだろうと、そう返したのに、いつまで待っても返信はない。 期待が落胆に変わり、溜息をついた瞬間、着信音。 光の速さで確認すれば、 『今日、八時にそこで待ってるから』 一気に期待が膨らんだ。 展望台に向かいながら考えるのは、「もしかして」と「まさか」。 階段を登り切ると、背を向けて座っている小さな背中が見えた。 余裕なんて全然ないくせに、 「よっ、お待たせー」 なんて、心とは裏腹の軽い口調とピースサイン。 ツインテールが揺れて、君が振り返る。 「遅いよ、もう」 星とネオンを背景に、拗ねたような口調と表情で言う君が、堪らなく可愛い。 もしも、期待した通りのことが起こるなら。 せめて、先に伝えたい。 ずっと言えなかった、大切な気持ちを。
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