0人が本棚に入れています
本棚に追加
『先月行った展望台、覚えてる?』
夕方、彼女から来た初めてのメールは、こんな内容だった。
『覚えてるよ』
聞くからには何かあるんだろうと、そう返したのに、いつまで待っても返信はない。
期待が落胆に変わり、溜息をついた瞬間、着信音。
光の速さで確認すれば、
『今日、八時にそこで待ってるから』
一気に期待が膨らんだ。
展望台に向かいながら考えるのは、「もしかして」と「まさか」。
階段を登り切ると、背を向けて座っている小さな背中が見えた。
余裕なんて全然ないくせに、
「よっ、お待たせー」
なんて、心とは裏腹の軽い口調とピースサイン。
ツインテールが揺れて、君が振り返る。
「遅いよ、もう」
星とネオンを背景に、拗ねたような口調と表情で言う君が、堪らなく可愛い。
もしも、期待した通りのことが起こるなら。
せめて、先に伝えたい。
ずっと言えなかった、大切な気持ちを。
最初のコメントを投稿しよう!