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そんなことを知ることはない浅木は、ペラペラと自分の気持ちを喋り続ける。 だけど、そんな浅木は、実はいつもこんなわけではないのだ。 水嶋が、うまく聞いているから、話しやすくて、余計なことまで話してしまう。 「だから、次の本も、よろしくお願いしますっ」 そう言うのは分かっている水嶋は、全く動じることもなく、用意していた本を差し出した。 「これは、私が浅木さんくらいの頃に大好きだった話よ」 本当は、高校の頃じゃなくて、中学の頃に好きだったんだけどね──そう、心の中で付け足したことを浅木は知る由もないが。 それは知らないままでも問題のないことだ。 「せんせーが好きだった本!?」 それに、水嶋の言葉に食いついてきた浅木には、知らない方がいい情報かもしれない。 「そうよ。浅木さんがどう思うかは分からないけどね」 カウンターに置いた浅木とは違い、水嶋は手渡しをする。 それはいつものことで、今日もいつも通りの出来事ではあったのだけど。 (あ……) それは、水嶋にとってはいつもとは違う出来事となった。
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