恋愛書架

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女子高なんて、勤めるんじゃなかった。 目の保養なんてものじゃないわ。 恋愛的な感性に人とは隔たりのある水嶋。 男性は小さい頃から好きになれず、いつも女性ばかりを気にしていた水嶋が、女子高にいるということは、実のところ、結構な苦痛でもある。 生徒には手は出せないし。 だけど──。 そう、気になる生徒がいるのである。 そして、その生徒が、懐いている、というのが問題で。 心のどこかで、期待している部分があったりするのだ。 そして、早くに図書室を開放するのも、朝読書のため、であったはずが。 その生徒に会うためにすり替わっているのを、水嶋自身が認識している。 「私、バカよね…」 その呟きは、誰にも聞かれることなく、図書室の中で零れ、そっと消えてゆく。 図書室解放までに、読みそうな本を選んでおこう。 それを渡せば、あの子は喜んでくれるに違いない。 その笑顔が見たい、と水嶋は思った。 そして、苦し紛れにもう一種類。 興味はないけど、もう一人やってくる生徒の本も選ぶ。 そうすることで、特別視じゃないと予防線を張っている自分が、とても汚く思えるのだった。
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