恋愛書架

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だけど、その笑顔の裏は寂しくて、辛くて。 例えば、同じ年齢なら。 恋人になれなくても、友達として笑いあうことができたのに。 そんな気持ちに支配されてしまう。 だから、少しでも、話す時間を引き延ばしたい。 水嶋には朝のこの時間しかないのだ。 放課後は部活を頑張っているため、絶対に図書室には来ない。 それが寂しいというのは言ってはいけないだろう。 恋人ではないのだし、何よりも学生として、部活に身を入れるのは正しいことなのだから。 「せんせーが選んでくれる本って、タイトルは知ってるんだけど、内容って知らなかったものばかりなんだよねー」 そう言いながら、カウンターに本を置いた。 「『赤毛のアン』だってそう。タイトルは分かるのに、読んだことなくて。知ってないといけないわけじゃないんだけどー、せんせーがすすめてくれるまでは、疑問に思ったこともなかったしー」 浅木が語る間に、相槌を打ちながら、返却の処理をする水嶋。 話は右から左へ抜けているわけではない。 一字一句聞き漏らすことのないように、しっかりと聴覚に神経を研ぎ澄ませている。
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