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細くて白い水嶋の指に、小麦色にキレイに焼けた指が一瞬触れる。
水嶋が自分のおすすめの本を『自分の好きだった本』と紹介してくれたことに喜んだ浅木が、いつもより興奮気味に本を取ろうとして、自分の方ではなく、真ん中あたりをガシッと握りしめたのだ。
そのとき、水嶋と浅木の指は微かに当たり。
水嶋の心には、電撃を打たれたかのような衝撃が襲った。
一瞬で全ての血管が開いたとでもいうように、身体が火照ってゆく。
浅木はあまり気にしてはいないようだが。
それを、残念と思いながらも、一方通行の方がいいと思っていた。
もし両想いだったら、止まらなくなるような気がするから。
「せんせー、ありがとう。うれしい」
無邪気に喜ぶ浅木にこの本を選んでよかったと安堵する水嶋は、今日本当の意味で初めて微笑んだ。
この顔が見たくて、勝手にやっているんだから、考えすぎはよくないのかもしれない。
そう、思えたのだ。
「せんせー、あのね…」
何か言いたげな浅木。
水嶋は「どうしたの?」と柔らかく聞く。
浅木がこういういい方をしてくることは珍しいので、少し心に不安が陰った。
今、心が前を向き始めたばかりなのに。
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