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「國村のジジイ?一言で言うとヤクザだよ。ここの宿場町では有名、というかここらへん牛耳ってた2代目だ。」
昼食の席でレツタに聞いてみると、思った通りの答えが返ってきた。
「やっぱり。裾から胸の彫り物が見えたからそうだと思ったけど。」
「実際胴体一面刺青だぜ。」
「お仲間ね、ミラル。」
「極道と一緒にしないでくれ。」
日本人たちにとって刺青はヤクザの象徴だったようだが、アイヌ部族にとっては逆に欠かせないものだった。
そもそも刺青とは世界のあらゆる部族の元服のしるしであり、また部族を表す記号でもあった。
ヤクザにしたってファッションではなく、忠誠や信条を表すのが本当のところである。
「日帝時代に初代國村リョウは小樽に入り舟仕事をやった。生計を立てるとイワミザワに移り宿場と浴場を経営した、って話だ。そういうヤクザ者はいっぱいいたのさ。」
「レツタ、この旅館は國村とどういう関係があるの。まさか違法なとこじゃないでしょうね。」
「ムッツリのお前が思ってるようなもんじゃないさ。一言で言うと、旅館のもん全員...」
「エトカ、車が停まったわ。きっと警察でしょうね。」
「案外早くたどり着いたのね。」
「他の宿場からもタレコミがさっき来た。ここらへん全部探し当たってるらしい。」
「さて、どうやって追い返そうかしら。」
ポキリポキリという指の鳴る音とと、首の鳴る音。
「...武装集団だよ。」
襖の向こうから聞こえた女将たちの話し声は、私を一瞬で納得させるに足った。
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