『さよなら、私』

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気がついたら、私は学校の教室に座っていた。 壁の針の時計を眺めて思う。 朝の五時にここにいることは初めてだ。 「……ね?あいつ、本当にゴミと同じ価値だよね?」 「そうよね。今日こそあいつを追い込んじゃおうよ」 廊下から声が聞こえる。 私は彼女たちの声に体が震える。 彼女たちは私をいじめて楽しんでいた子たちだった。 時にはノートを隠したり。 時にはトイレの中に体操着を入れたり。 時には上履きに大量の絵の具を入れたり。 時には机の中に画鋲を多く入れたり。 まだ罵声なんて軽いものかもしれない。 「出来ることなら透明人間にでもなってしまいたい」 そう、心の中で叫んだ。 彼女たちが教室の扉を開けて中に入ってくる。 終わりだ、そう思って目を瞑る。 「あれ?誰もいないね」 「当たり前でしょ?」 目を開けたら、女子高校生三人は私のことに気が付いてないみたいだ。本当に透明人間にでもなったのかもしれない。 「机に文字を書いてしまおう?」 「なんて書く?」 「うーん、やっぱり『死』という字は必要よね?」 急に窓ガラスに映る教室の扉を見てしまった。そこには担任がいた。 彼は何も言わずにこちらを見たが、そのままどこかに行ってしまった。 見て見ぬふりか。 「よし、書けた」 一人の女子高生が言う。 「そろそろ、他の奴らも来ちゃうから上に行こう?」 彼女たちは教室を出る。 「これって……」 私は自分の机を見る。見たことある文字がそこにあった。 『死ねよ、さっさと。お前みたいな人間がいるだけで空気が腐るんだよ?』 赤字で『死ね』と書き、その他は黒字である。 その下にはこう書いてあった。 『大丈夫?私が救ってあげるから屋上に来て。待ってるから』 しばらくして十人ほどの生徒が次々来るが私の席を見ぬふりをして自分たちの席に座っていく。 私は教室を出るために教室の扉を開ける。 「うわー、扉が勝手に開いたぞ?」 そんな言葉を後ろから矢のように刺されながらも足早に屋上に向かうのだった。 「ねぇ、あいつ、来ると思う?」 「来るでしょ?ゴミだもん」 「あっ、き……」 「何言ってるのよ?」 「気のせいのようね」 私が扉を開けたらそこにはさっきの女子高校生三人組がいた。
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