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第1章
放課後の図書室というものは、どんな人間でも暖かく迎え入れてくれる場所だ。
例外はあるのかもしれないが、少なくとも俺はこの、まったりとした、のーんびりとした空間しか知らない。
最新の雑誌を見ながらきゃあきゃあ言い合う女子達。
やる気のない図書委員は注意するでもなく、自分達も思い思いの事をしている。
「臼井くん」
そんな図書室の片隅、一人用の机に陣取り真っ白のノートを広げていた俺は、今日もこの変わり者に捕まったのだった。
「なんだい、神崎くん」
「臼井くんはさ、透明人間になりたいって思う?」
「…透明人間?」
はて、一体どこからそんな話が出てきたのやら。
「クラスの子がさ、言ってたんだ。透明人間になりてーって」
「はあ」
「女の子のお風呂、覗くんだってさ」
「ははあ」
わかる。
わかるが、今同意すべきはそこじゃないんだろう。
コイツが話したいのはそういうコトじゃないって事くらいはわかってきた。…つもりだ。
「でも、僕、わからないんだ」
「わからない?」
「だって、だってね臼井くん。もし本当に、透明人間になってしまったら……」
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