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ふと、視界の端に何かを捉えた。 慣れない画廊の雰囲気と縛られた女の絵の魅力にすっかり呑み込まれてしまっていたために気づかなかったけれど、 画廊の端に置かれた机のところに誰か座っているようだった。 何か書き物をしていた彼は、おれの視線に気づいてふっとその目を上げた。 すんなりしたしぐさで会釈をされた。にっこりと微笑みまでくれた。 おれも少し遅れてそれにならう。ごくごく一瞬のやりとり。 画廊の番を任されている人だろうか。彼は上質そうな風合いのニットに、律儀に一番上までボタンを留めた白いカッターシャツという、オーソドックスだがどこか禁欲的な装いをしていた。 エアコンがついていないのか、画廊の中は少しだけ蒸し暑い。 それだけに、彼がきっちりと衣服を着込んでいることがどこか気になった。
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