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彼の目はアーモンド型に優しくなごんだかたちをしていた。 大型犬のそれに少し似ている。 といって別に、彼の体格はごく普通の中肉中背でガタイが良いというわけではない。 年のころは、おれより10歳くらい上だろうか。30代前半、といったところ。 おれは特に深く考えずに彼の第一印象を「大型犬のようだ」とそのとき思ったものだけれど、 この印象が大きく間違っていなかったと、後々知ることになる。 それから、縛られた女の絵のほかに展示されている作品をしばらく見て回った。 やはりどれもとてもいかがわしくて、でも美しさをたたえたものばかりだった。 これを描いたのはどんな人なんだろうと想像する。 緻密な作風からするに、きっときまじめで気難しくて、でも胸の内に熱いものを秘めた人だったりするのかもしれない。
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