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画廊の中はひどく静かだ。聞こえるのは、やたら間延びしてカチコチ鳴る気がする時計の秒針の音と、 青年が机の上でサラサラと何か書き付けている音。 それから、自分の呼吸と鼓動の音。それがやたら大きく聞こえて、青年に聞こえてしまわないか心配になる。 一通り見てまわった後、自然と足があの縛られた女のもとへ向いた。 もう一度眺めてみても、どうにも不思議と魅力的な絵だった。 おれは、それをじっと見る。その間がどのくらいだったかわからないけれど、はっと気がつくと自分の身体がある変化をあらわしかけているのがわかった。 鼓動の音が一際大きくなる。 ーーーなんだ、これは。絵の中の、それも変態的な絵の中の女に、おれはーーー おれは比較的性的な事柄に対してノーマルな嗜好で、他の同世代の男と比べると淡白なほうだと自認している。 もちろん、女の子は好きだ。でもこんな風に縄を肌に食い込ませて、男のーーあるいはある特定の種類の人間の?ーー本能を煽るような姿態の女性に対して、おれはこれまで興奮したりすることはなかった。 それが、どうだ。このみっともないさまは。 今ならまだ、大丈夫。深呼吸をして、気持ちを落ち着けることにする。
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