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手際よく片付けられていく店先。女の子からcloseの札を受け取る姿に次の言葉が出てこない。
「その人の名前は?昔から住んでる人なら多少わかるよ」
「あ…えっと、加藤…絹子っていうんですけど」
かとうきぬこ?
ヒロトと呼ばれた外人みたいな顔つきの男の人は、フルネームを口にしてピンと来ないとばかりに眉を寄せた。
「それって……絹子さんでしょ?」
横に立つ女の子が言うと、ポカンと口を開けた状態で何度か頷く。
「あぁ、絹子さんね。あの人加藤だったな…」
大丈夫かよ、この人……
「じゃ、中で待ちなよ。探してるのが絹子さんなら俺たちから連絡してあげれるよ」
開け放したドアを閉めながら店の中へと案内されて、断る理由を見つけられずに促されるままにカウンターの真ん中の椅子に腰を下ろした。
暖かい空気と珈琲の香りがして、空っぽの胃が反応する。
「外は寒かったろ?珈琲飲んで行きなよ」
肋骨に響く低音を聞きつけたのか、大翔さんは優しく微笑む。
迷いなく厨房へと入っていくから、この人の店なんだろう。彼は慣れた手つきでフラスコに湯を注ぎ漏斗を差し込んだ。
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