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「はい、どうぞ!」
「ありがとうおねえちゃん!」
週末、明日花は水族館で風船配りのバイトをしていました。
あのあと、すぐに面接をして即採用になったのです。
明日花は風船を配りながら、本当にいい条件のバイトだよねと改めて思いました。
働くのは毎週土曜と日曜の二日間だけで、時間も夕方まで、それに加えて学校からはまあまあ距離があるので先生に見つかる心配も少ないのです。
一応年の為に、バイト先には16歳と年齢を偽ってからバイトをしていますが、とにかく稼げればいいのよねと思いながら、明日花はお客さんに笑顔で風船を配っていきます。
明日花が働いている水族館は、最近出来たばかりのとても綺麗な所で、様々な魚が大きな水槽の中をあっちこっち泳いでいます。
そんな水族館の一番の目玉は、イルカやラッコにアザラシではなく、ある伝説上の生き物でした。
それは何かと言うと………。
「あ!人魚だ!」
「ママ、人魚!人魚だよ!!!」
一際人が集まる大きな水槽、お客さん達が注目していたのは何と人魚でした。
水槽の中を悠々と泳いだり、岩の上でお客さんを見て微笑んでいる美しい人魚達………。
明日花も初めて見た時は、とても驚きましたが今では少しは見慣れたのか少し余裕を持ってお客さんに風船を配りつつ、よく人魚を観察したりしました。
貝殻のブラジャーに、貝殻の髪飾り、上半身は人間の女性なのに下半身は魚………。
最初こそ、水族館の人が人魚を演じていると思っていたのですが、それにしては何か違和感があるのです。
何と言ったら良いのかはわかりませんが、あまりにも出来すぎている人魚に明日花はちょっとだけ違和感を覚えつつも、風船配りのバイトに勤しみました。
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