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「はぁ、マジでどうしよう………」
結局、お返しを何にするか決めきれなかった彰俊は家までの帰り道を肩を落としながら歩きます。
このままだと、あっという間にホワイトデーはやって来てしまいます。
それに、先ほど財布の中身を見てわかったのですが、もうほとんどお小遣いが残っていないのです。
それに加えて、最近欲しい物がありすぎて親に前借りをしまくった結果、彰俊はお小遣い前借り禁止令を言い渡されていたのでした。
金はない、上げたいものも決まらない、それどころか上げられるかどうかすら分からない………。
せっかく初めての彼女からチョコをもらったのに、このままだとお返しをくれない最低野郎に成り下がってしまうと、再び大きな溜息を吐いていると、ふと電柱の近くで何かが光っているのが見えました。
「なんだ?」
もう一度目を凝らして、電柱へと足を進めると、そこにはリボンのチャームが着いたネックレスが落ちていたのです。
そして、その周りにはジュースの缶と一緒に花束が添えられていて、彰俊は事故現場だと気づきました。
「こんなところで事故があったんだ」
知らなかったなと思いながらも、彰俊は目の前に落ちているリボンのネックレスを拾い上げました。
可愛らしいリボンのチャーム、真ん中には大粒の石がキラキラと輝いていて、彰俊は脳内でこのネックレスを着けている彼女の事を想像しました。
きっと、このネックレスは事故で亡くなった相手に捧げられたものでしょう。
だけど、彰俊は気づけばネックレスをポケットに入れると誰もいないことを確認してから慌ててその場から立ち去りました。
(大丈夫!誰も見てない!それに、どうせ死んだ人はもうつけられないし)
そんな事を考えながらも、心のどこかでは無料でお返しが手に入れられてラッキーと少しばかり不謹慎な事を、彰俊は思っていました。
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