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「あ!誠司ー!」
先程まで、郁実に抱きついていた百合が甘えた声で、ある男子生徒に抱きつきました。
最近、百合には同じ学年の彼氏が出来たのです。
百合は、それはそれは彼氏にベタ惚れで学年内でもバカップルと言われるくらい、彼氏に甘える姿を多く見かけます。
「百合、松野さんごめんな百合がうるさくて」
「別にいつものことよ」
「もー!郁実冷たい!」
そう言って頬を膨らます百合と、それを笑う百合の彼氏。
そんな二人を見て、郁実も少しだけ口角を緩めましたが心の中では全く笑っていませんでした。
実は、郁実は本当は百合の彼氏の事が好きだったのです。
それも、百合に相談しており最初こそ百合は協力してくれると、あれやこれやと郁実と彼の仲を取り持とうとしていたのですが、そのうち自分までもが彼の事を好きになり、いつのまにか郁実が彼の事を好きだということを忘れ、自分が彼女の座を得たのです。
郁実は、表向きは全く気にしていないフリをしていましたが、内心では百合に嫉妬の炎を燃やしていました。
応援してくれると言っておきながら横から掻っ攫っていった百合………。
笑顔で彼氏と会話をする百合を見ながら、郁実は膝に乗せていた拳を強く握り締めました。
「ね!郁実!」
「え?」
その為、突如話しかけてきた百合に郁実は思わず抜けた返事をすると、百合は頬を膨らませながら彼氏に抱きつきつつこう言いました。
「今日の放課後、私達で赤い上履きの噂確かめようって言ってるの!」
「ごめんな、松野さん
百合、松野さんを困らせたらダメだろう?」
「だってー………」
「いいよ、いつものことだもの」
そう返事をした郁実でしたが、心の中では大きく溜息を吐いたのでした………。
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