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◇◇◇
「お年賀、やっぱり違う方がよくないか?」
「なんで? 俺たちの焼き菓子が一番おいしいでしょ」
「……それはそうだけど」
緊張した様子の晶也など、めったに見られるものではないので響は朝から上機嫌だった。
「それに、先輩が顔出してくれることが、一番喜ぶと思います」
心からの本心だったが、そう伝えると晶也はありえないくらい真っ赤になった。こんな晶也も見たことがない。
「じゃ、そろそろ行きますか」
「そうだな」
響と晶也が暮らす街からも、洋菓子店「echo」がある場所からもそれほど離れていない場所に、響の実家はある。
「ん、どうした?」
普段よりも少しだけかしこまった様子でジャケットを羽織った晶也に見惚れていたとは、悔しいから言わない。
実家に着くと両親は笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい。晶也さん、よく来て下さいました」
「こちらこそ、お招きいただきまして、ありがとうございます」
そして久しぶりの顔も、そこにはあった。
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