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「ばあちゃん!」
「響が五年ぶりに正月顔を出すって話したら、おばあちゃんがとても会いたがって……昨日兄さんが連れてきてくれたのよ」
母がそう説明する間、にこにこと近づいてきた祖母は、響ではなく晶也の目の前に立ち、腕や背中をすりすりとさすっている。
「ばあちゃん?」
「ああ……よく来たね。それにしても、こちらのお兄さん、いい体だねぇ」
不思議そうに声をかけると、やっと孫の存在に気付いたようだが、相変わらず晶也の体をそれはもう撫でまわすように触っている。
晶也はというと、どうしていいかわからない様子でそのまま仁王立ちになり、祖母に好きなようにされていた。
「おばあちゃんて、体が大きかったり、体格のいい人が大好きなのよ。晶也さん、ごめんなさいね」
「い、いえ……大丈夫です。こんな体でよかったら、いくらでも……」
「ぷぷっ……くっ…………ぎゃはは! ばあちゃん、セクハラはその辺までだな」
困った晶也の姿はかわいらしくもあり、ずっと眺めていたいくらいだったが、晶也が本格的に困惑し始めたので、やんわりと祖母を引きはがした。振り向いた祖母は満面の笑みになる。
「ああ、蒼くん……お年玉あげないとね」
「ばあちゃん、俺響だし……それにもう三十だからお年玉はいらないよ」
「そうだったかい。大きくなったもんだねぇ」
昔から、いろんな人から弟の蒼とはそっくりだと言われていたから慣れたもんだけれど、祖母は響と蒼を一度も間違えたことはなかった。ただ高齢になるにつれ、最近の祖母には物忘れや記憶違いが時たま出るらしい。
「そうだよ、俺はおっきくなったから、かわりにばあちゃんにお年玉あげるね。あとおいしいお菓子もどうぞ」
「まあ、立派なお菓子だこと」
「ここにいる晶也さんと一緒に作ってるんだよ。俺は晶也さんのお店でお菓子を作ってるの」
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