死骸と猫とレゾンデートル

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「お母さんはね、用事を済まさないと来てくれないから、代わりに私が遊びに行くからね」 「ナギサお姉ちゃんが来てくれるの?」 「ミナちゃんのような子供を救うために、私はここにいるんだよ。 でもね、この世界で生きるのは辛いから、時々ミナちゃんの行く世界に行きたいと願っているんだ」 「ミナのような子供をもっと救って欲しいから、ナギサお姉ちゃんはミナと行くのはダメだよ」 「でもね、辛いのよ……お姉さんも早く、子供たちのいる天国に行きたいと願っているの」  私の眼から涙が零れました。その雫をミナちゃんの細い指が、そっと拭ってくれたのです。 「ナギサお姉ちゃんは、ミナのような子供を救うのが仕事でしょう。だから、もっともっとミナのような子供を救ってあげてね──」  ミナちゃんがそう言って、私の手に頬を寄せました。 『ナギサ、もう娘を連れて行くぞ。では、また逢おう』  ちりぃぃん、ちりぃぃん──  蕭々と鈴の音を鳴らして、ワルキューレがミナちゃんを連れて消えました。 「ありがとうございました……ありがとうございました……」  一部始終を見ていた母親が、崩れるように床に伏せると号泣しました。  ミナちゃんの腐乱した手をそっと離して、私はいつものごとく警察に電話をかけたのです。
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